商品詳細
2008年10月4日リリースのセカンドアルバム。
太平洋を隔てた有袋類の大陸オーストラリアの監獄に囚われた、北海道のラッパーB.I.G JOEが刑務所内のレコーディングスタジオでラップを吹き込み、仲間のDJ DOGGのもとに送り、日本有数のトラックメイカーたちによって音を付けられたのが本作。
聴いているだけで、その言葉の圧倒的な重みに打ちのめされ、その身が律せられるような感覚にとらわれる作品。筆者にとってB.I.G. JOEの2ndアルバム「COME CLEAN」とは、そんな特別な一枚だ。
周知の通り、現在彼はオーストラリアの刑務所から帰国し、精力的な活動を行っているが、当時バラバラのカセット・テープで獄中から届けられ、大きな話題を呼んだ前作、「LOST DOPE」のリリース時に比べると、獄中でも幾分の自由を手に入れ、刑務所内でのデジタル録音までもを許されることとなったわけだが、依然として「表現すること」への欲求は薄まることなく、むしろより強固な意思で、真摯に音楽と向き合い、格段の精度で本作を作り上げたかのように見える。
全幅の信頼を置く盟友DJ DOGG、更にはDJ QUIETSTORM/ILLICIT TSUBOI/OLIVE OIL/DJ MICHITAら、国内きっての鬼才が集い、彼のために用意されたトラック群は、製作過程において全て獄中のB.I.G. JOE本人との細かな意思の疎通を経ずして、本人曰く「良い意味で 好き勝手に」作り上げられたそうだが、あまりに美しい“COME CLEAN”をはじめとする多くの楽曲からは、そうした物理的障害の存在がにわかには信じられないほど、例えるならばO.C.が“TIME’S UP”と、ビギーが“UNBELIEVABLE”のトラックと出会ったかのような、“必然”を感じさせる、恐ろしいまでのシンクロ率が感じられた。
断言してもいいが、ここには“クラシック”作品特有のマジックが発生している。そして、それら珠玉のトラックを乗りこなすB.I.G. JOEのラップもまた、凄まじい。
彼のラップは「リスナーへとストレートにメッセージを伝える」、MCとして最も重要な、その一点において恐ろしくスキルフルだ。誤解してほしくないのだが、彼は声質/フロウ/リリカル・センス、およそ優れたMCにとって不可欠とされる全ての部門で、極めて高い基礎能力を備えたMCであり、決して技術的に未熟な、よく言われるところの味で勝負する類のMCではない。しかし、この作品に収録された彼のラップを、筆者の知る既存の価値観で作られた、偏った側面から分析することは出来ない。それは、本作に比肩し得るほど壮絶なラップを、つまりはB.I.G. JOEを批評するうえでの比較対象となるべき日本語を駆使したHIP HOPを、筆者がこれまでに聴いたことがないからだ。
過去に前例のない、オリジナルでストレートな極上のHIP HOP。陳腐な言葉しか思い浮かばず恐縮だが、これだけ大きな痛みを伴い、誠実に作られた素晴らしい作品に対して、小手先の評論でお茶を濁すのは一種の“冒涜”であると筆者は考える。明らかに自らのキャパシティを超えてしまった彼のラップに対して、恥ずかしながら現時点で、筆者の力量で語れるのはそこまでだ。そして、本作で彼の放つメッセージもまた、他に類を見ないオリジナリティを感じさせるものだ。
まず、彼の人生において大きな転機となったドラッグ・ディール経験に関して、本作ではこれまでになく生々しく言及されているのだが、ここでの描写は一流のハードボイルド小説を読むかのように克明でスリリングなものであり、極論、彼のストーリーを肯定しようが否定しようが、超一流の“エンターテイメント”として成立し、リスナーの想像力をかき立てるはずだ。
しかし同時に、この作品は単なる悪さ自慢、ファッションとしての“ギャングスタ・ラップ”とは決定的に違う。怒り/哀しみ/葛藤、アルバムを通して表現される、彼の強さと脆さ、その全てを隠そうともしない剥き出しの感情が交錯する独白は、正視し難いほどに痛々しいものだが、“PLEASE GIMME SOME SWEET”曲中の「俺の詩を 聴き痛みが伴う、ならばこの経験の知恵はお前のものだ」とのラインそのままに、彼は自己の犯した過ちを肯定することなく、極めて高い描写能力とリリカル・センスでこの世のどこかに確かに存在する「冷酷な現実」を示すことで、リスナーに対して知恵を授け問題提起を促し、最終的にはどん底の絶望の中から、一筋のか細い光を照らし出して見せるのだ。
語られる“闇”が大きいほど、繊細な“光”はより大きく輝きを増す。本作は、ほとんど“奇跡”と言っていいほどに美しいコントラストで彩られた、クラシック・アルバムだと言えるだろう。
トラックリスト・個別ダウンロード
|
Title |
Time |
File-Type |
Sample |
Available |
Price |
1 |
PSYCHO Produced by OLIVE OIL |
2:45 |
aiff |
|
|
¥150 |
2 |
D.D.D -DRUG DEALER’S DESTINY- Produced by DJ PERRO |
4:36 |
aiff |
|
|
¥150 |
3 |
NOWHERE Produced by REBEL BEATZ |
6:06 |
aiff |
|
|
¥150 |
4 |
I WANT’EM TURN BLACK Produced by OLIVE OIL |
6:19 |
aiff |
|
|
¥150 |
5 |
YOU WANNA BE ME? Produced by DJ PERRO |
4:51 |
aiff |
|
|
¥150 |
6 |
MURDERER Produced by REBEL BEATZ |
3:41 |
aiff |
|
|
¥150 |
7 |
UN, DEUX, TROIS… Produced by OLIVE OIL |
5:12 |
aiff |
|
|
¥150 |
8 |
PUBLIC ENEMY NO.1 Produced by BUN |
3:39 |
aiff |
|
|
¥150 |
9 |
H.Y.P.N.O.T.I.Z.E Produced by DJ PERRO |
3:08 |
aiff |
|
|
¥150 |
10 |
WE’RE SOULJAZ Produced by BUN |
4:08 |
aiff |
|
|
¥150 |
11 |
COME CLEAN Produced by MICHITA |
6:10 |
aiff |
|
|
¥150 |
12 |
SPEAK 2 THE SILENT Produced by DJ QUIETSTORM |
4:46 |
aiff |
|
|
¥150 |
13 |
PLEASE GIMME SOME SWEET Produced by DJ PERRO |
4:09 |
aiff |
|
|
¥150 |
14 |
CLINK RAP Produced by ILLICIT TSUBOI |
6:35 |
aiff |
|
|
¥150 |
15 |
A TIME TO REMEMBER Produced by TOSH of CLIMBER |
4:46 |
aiff |
|
|
¥150 |
16 |
HEARTZ OF MEN’08 Produced by DJ PERRO |
4:46 |
aiff |
|
|
¥150 |
|