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ファイル名 | YoyoC-LovePeaceAndLight.zip |
公開日 | |
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制作 |
オレらのスタイルは逆さ 街中のブーム
讃えるはナイヤビンギのRIDDIM
繰り返されて走るぜONE LOOP
体の奥に震わせるBASS
まるで心臓の鼓動の様なPACE
分かるヤツだけついてこいよ READY OR NOT
この音は伝えるぜ 何がREALITY
作られたヤツらと比べるなQUALITY
(“MORE REALITY”)
まさにCOOL & DEADLYなそのチューンを耳にした時、YOYO-Cという“歌い手”の中にある揺るぎない想いを再確認した。ラガマフィンという生き方。それこそが彼の突き動かしてやまないのだ、と。彼にとっての“レゲエ”とは「JAMAICAの音楽」で“ディージェイ”とは「世界一かっこいいSTYLEのRAP」であり、“ラガマフィン”とはいい意味でREGGAEのニオイがスッゲーするもの全て」だという。中学生時代にハードコア(・パンク)のバンドを結成し(担当はVo.)やがてダンスホール・レゲエのヤバさに目覚め、ディージェイとしてマイクを握る様になった彼は、地元横浜でMIGHTY CROWNを始めとする様なサウンドやアーティストらとリンクし活動を続けるが、94年に意を決して渡英。ロンドンのジャマイカン・コミュニティで知る人ぞ知るレゲエ・レジェンド=ジュニア・デルゲイド(昨年惜しまれつつ他界)の下で己のディージェイ・スタイルに磨きをかける(この時点でジャマイカ/キングストンでのUS/NYでもなくUK/ロンドンを選ぶところが彼の“ラガマフィン”たる由縁)。そして約4年の修行を経て帰国した彼は、「RULE」、「DAPPA」、「HIKARI」、「LIFE TEACHER」等のクラシック・チューンを国内の主要レーベルからリリースし、“ハマのコンシャス・リリシスト”として一目置かれる存在となった。“人間”、“生命”といった誰しにもダイレクトに響くキーワードを盛り込んだ森羅万象系の詩世界と、パンク時代から燻ることのない反骨心を投影したディージェイ・ビジネス噺の見事なバランス、そして常にニュー・スタイルを示さんとする実験精神は、ジャパニーズ・レゲエ・シーンのみならずヒップホップ界隈でも噂になる程のものだった(“フューチャー・ショック”から出たMACCHO、JUN 4 SHOTとの「045 STYLE」参照)。その渦中の99年、彼はFIRE BALLの正式メンバーとなり、MIGHTY CROWNのレーベル“ライフ・スタイル”より「JUICY FRUITS」等のリリースをするが、2002年に彼等がメジャー契約をする際に“個人としてのより自由な活動”を追求するためにグループを円満脱退。自らのレーベル/プロダクション“ジューク・ボックス”の旗揚げに至っている。
冒頭で引用した“MORE REALITY”が収録されたYOYO-Cのソロ・アーティストとしての記念すべき初アルバム『THE SPECIALIST』は、とにかく衝撃的な作品だった。それまでのソロ・マテリアルを一切含まず、全曲録り下ろしで、“自分の音は自分で作る”というD.T.Y.精神をむき出しにした同作は、サンプリングを基調としたサウンド・プロダクションでダンスホールのトラック・メイキングのセオリーをぶち壊していたのだから。
「このアルバムを“ヒップホップなの?レゲエなの?”とか一番訊かれたくねーな、そこが。オレがアルバムの中に詰めた答っていうのは、ジャンルなんか関係無しに良いものは良いっていう事がメッセージって感じで。それを訊かれると一番悲しいし、“ジャンルが必要なのか?”ってオレは言いたくなる。オレらがやってるのは音楽だから。レゲエ好きなリスナーのちょっと成長した部分がこれで見られるといいかな」
この“発言”は『Riddim』誌、2003年7月号インタビュー記事からの抜粋だが、そのあまりの新しさに“5年くらい先に理解されるのでは?”とさえ言われていた同作は同年の同誌アワードにて“ジャパニーズ・レゲエ部門”の堂々一位に選出されたのだった。つまり『THE SPECIALIST』は、多くのレゲエ・ファンから“いわゆるジャパレゲとは一線を画す作品”として高く評価されたのである。
世の趨勢に迎合することを嫌い、ラガマフィンとしてのトッポい生き方を貫く実践主義者YOYO-Cは、この約3年振りとなる2ndアルバム『LOVE, PEACE & LIGHT』でも、ジャンル云々以前のオープン・マインドな音楽表現、という変わらぬスタンスと、より大きくなった人間として、芸術家としての“度量”を見せつけている。何がカッコ良くて何がカッコ悪いのか、何にコダワって何にコダワらないべきなのか、を熟知した“地に足のしっかり着いたアーティスト”である彼は、ただひたすらにニュー・スタイルを探求する。このアルバムは言うまでもなくその一つの大きな“成果”である。プログラミングに関しては今回は全て自身で手掛け、「どうしてもこのオケで歌いたかった!」という〈Undying Love〉の(7)、〈Love Me Forever〉の(12)の2曲のみ、そのキング・タビー(言わずものがな偉大なる“DUB”の開発者)版を、その原盤権を所有するロンドンの老舗レコード・ショップ、ダウンビート・レコードよりライセンスし、ミックス・ダウンは全て聖地キングストンキング・ジャミーズ・レコーディング・スタジオで行っている。前作では敢えてジャマイカ人の手を借りず、国内で完結させていたYOYO-Cだが、、、、、、。
「オレにとって“ジャミーズ”とは、ダンスホール(80’s)の好きなところのど真ん中あたりのレーベル。音(BASS)も一番太いし、やることもいちいち掟破りだし。普通あんなにポンピングしないでしょ。そこがいい!(息子の)ジャム2もそのスタイルをよく理解してると思った。凄い親子を見た!」
奇しくもかつての師匠キング・タビーの音までもをいじることになったキング・ジャミー(80年代中盤にモンスター・リズム〈SLENG TENG〉を送り出し、時代を変えた男)と、その四男ジャム2も正直、この今のジャマイカには決してないタイプのサウンドとアイディアが詰まったアルバムに驚いたのではないだろうか。本盤のボーナス・トラックとなる(14)〜(19)のジャミーズ親子(まさに“FATHER & SON”)による別ミックスからもそのヨロコビは伝わってくるのだから(爆音で示されるそのクォリティ!)。
光とMIC/言葉と愛/過ぎゆくLIFE/右手にMIC/FASHION & STYLE/WICKED & WILD、、、、と三拍子のディープなトラックに乗せて放たれるYOYO-Cならではのフレーズの連打。その「3STEPPER」で幕を開ける本作には、日本が世界に誇るべきラガマフィン・ソルジャー、THE SPECIALIST=YOYO-Cの過去、現在、そして未来までもが写し出されている。“パレットに言葉を乗せてカラフルに染め上げる”というリリシストとしての一面は、当然ながらトラック制作と表裏一体、なのだ。神懸かり的な泉の如く湧いて出るニュー・スタイルのフロウがそれを証明する。〈FREEDOM BLUES〉が響く、有坂美香(REGGAE DISCO ROCKERS)をフィーチャーした(6)や忍者男ばりのゴールデン・ティースがギラリと光る(8)、一等“PUNK”な怒りの(9)、いつもながら相性のいいMOOMINと共にコートニー・メロディのクラシックを日本語でリメイクした(11)、そしてレゲエ・アーティストとして伝えるべきことを伝えたポリティカルな(13)まで、全ての楽曲に無駄が無い(キラー・チューンといったコトバはこういった曲にこそ相応しい)。レゲエに拘るのではなく、ラガマフィンであることに拘った結果がここにある。進化し続ける極東ラガマフィン=YOYO-C。彼はLOVEとPEACEとそして一筋の光でもって、人間の理想とする人生を描いている。そのココロは、この音と言葉の波動の中にある。
2006年3月 二木崇(D-ST.ENT.)
mp3音源データ : 19点
ジャケット画像データ : 1点