01,Interrlude 02,マトリョーシカ feat. カツヲ 03,N.G.S.K. Skit 04,Helf Gott 05,NDB feat. Lain,カツヲ,えいち 06,Head Nodd Shit feat. Philieano,Lain 07,Emerald Mountain feat. Peach ,Marco 08,Perfectworld 09,Game Plan feat. カツヲ,Marco,Lain 10,Pray 11,Acro feat. カツヲ 12,Govinda feat. Mista |
『無から煌めきの断片を集めビートメイキングするDJ Motoraは紛うことなき現代のアルケミストでもあるが、常に満足せず高み目指しエメラルド色した山を越えようとする等身大のアルピニストでもある』
金、女、名誉。今世紀のヒップホップに真っ先に浮かぶパブリックイメージは、ネガティブな攻撃性を交えたスターダム志向という万人の共通認識は否定出来ない。それは様式美に囚われ形骸化してしまったロックと同じ轍を踏み、差異の無いフォロワーを量産し、シーンの表舞台に規格内に収まったコピー商品的な無個性を氾濫させている。
異を唱え反旗を翻した過去の先駆者達は、光無き地下世界で濁泥した苦い水を飲み喘ぎながらも音を鳴らし続けた。けれどアンダーグラウンドというカテゴリーさえも心無き商売人から安心のレッテルを貼られてしまった今となっては、其処は甘い水に溢れた居心地の良い場所に過ぎず、後からやって来た住人は自らに陽の当たらないことを努力不足だと認めようとはしない。底は実力が無い者が吠える世界。まるで童話にある世間知らずの蛙ばかりが増殖する井戸だ。誇張に腹膨らませ破裂寸前である。じゃあDJ Motoraはどうなんだ?彼は己の立ち位置をしっかりと見極めている。彼の視線はメインストリームを見据えている。
フットワーク軽くアンダーグラウンドの悪路をアクロバティックに跳び越えて来たからこそ光射す場所に顔を向け立っている。彼の音楽に一切の誇張は無い。全てが等身大である。もちろんこの場合、等身大とリアリティが同意であることは説明するまでもない。サクセスの為に見栄はって大口叩くのが常の世界で、等身大の音楽ではコンパクトに纏まってしまっていて勝負出来ないのではないかとの心配は御無用。彼のインパクトある等身大は凡百のアーティストの数倍もデカイ。まるでガブリエル・ガルシア=マルケス『族長の秋』の大統領のようにデカイ。
余談だがこのラテン文学の主人公は金玉が凄く大きい。比喩的な部分でDJ Motoraの人間性に通じる。そんなデカさに憧れて彼を慕うN.G.S.K.のドープな勇者達が集い、鉄壁の布陣と綿密なゲームプランで造り上げたアルバムは、広さと高さと奥行きと(掘り下げた深さ)を供えた小宇宙規模の等身大作品に仕上がっている。まるでその宇宙は強さや優しさや慈しみの星が輝くパーフェクトワールドを想わせる。一聴してその果てしなさは理解して貰える筈だが、更に音と言葉に意識を集中し現実の表裏を捲り、何層にもマトリョーシカように重なった多次元世界を楽しんで欲しい。